Cosmos(コスモス)系ブロックチェーンのArchway(アーチウェイ、ARCH)を徹底解説!
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Stir リサーチャーのプリズムです。

今回はCosmos系ブロックチェーンの一つであるArchway(アーチウェイ)について、わかりやすく解説していきます。

本記事を読むことで、Archwayの全体像を把握し、どのような特徴を持つブロックチェーンなのかを理解することが可能です。

 

Archwayの概要

Archwayとは、ブロックチェーンの運用に際して発生する収益をDapps(分散型アプリケーション)開発者へ還元することに重きを置いているブロックチェーンです。

技術的には、Cosmos SDKを用いて開発されたCosmWasm(コズムワズム)対応のL1ブロックチェーンとなっています。

 

ArchwayとCosmos(コスモス)の関係

本章では、ArchwayとCosmosの関係性について紹介します。

ArchwayはCosmos SDK、Tendermint、CosmWasmといったCosmos系の開発ツールを用いて開発されているブロックチェーンであり、IBCの利用も可能となっています。

 

このような特徴から、Archwayユーザーは同じくIBCに対応しているCosmos系のブロックチェーン(Cosmos Hub やOsmosis 等)とスムーズにトークンやデータをやり取りすることが可能となっています。

 

画像引用元:Archway公式サイト - Technical Overview

 

Archwayの背景

Archwayが構築された背景には、ブロックチェーン関連プロジェクトの成功における恩恵の享受に偏りが起こっているという現状が挙げられています。

 

基本的にブロックチェーン自体の評価額は、当該チェーン上に乗っているDappsの価値も加味されて向上するケースが多いと考えられます。

しかしながら、当該チェーンの評価額が向上したとしても、Dappsの開発者や貢献者に対する見返りは乏しいという実情があります。

 

Ethereum(イーサリアム)とUniswap(ユニスワップ)の関係を具体例として解説します。

 

Ethereumというブロックチェーンの場合、Uniswapというユースケースの存在がネイティブトークンであるETHの価値向上につながった可能性は否定できません。

一方でUniswapは、ETHの価値向上による恩恵はほとんど受けていません。

 

ArchwayはこのようなDappsの課題を解決し、Dappsの価値向上とブロックチェーン自体の価値向上を両立できるようなエコシステムを実現しようとしています。

画像引用元:Introducing Archway

 

Dapps開発者への報酬設計

本章ではArchwayの肝となる部分である、Dapps開発者に対する独自の報酬設計を解説していきます。

 

報酬設計には以下の3通りの仕組みが存在します。

  • ガス代分配による報酬
  • トークンの新規発行による報酬
  • スマートコントラクトの利用手数料の設定

以下に、それぞれの詳細を解説していきます。

 

画像引用元:Archway公式サイト

 

①ガス代分配による報酬

1つ目の報酬体系はガスリベートと呼ばれています。

これはブロックチェーンの使用によって発生したガス代を、Dapps開発者とバリデータの間で実質的に分割する仕組みです。

なお、バリデータとは、ブロックチェーンにおけるブロックの生成・検証作業を行う役割のことです。

 

発生したガス代の50%がDapps開発者に支払われる一方で、残りの50%はバーン(暗号資産を永久に使用不可能な状態にすること)されます。

 

Cosmos Hub等のブロックチェーンではガス代の全てがバリデータに支払われており、これがバリデータの運用を行うインセンティブの一つとなっていました。

Archwayではこの支払先をDapps開発者にすることで、ネットワークの価値向上(下図を参照)につなげようとしています。

 

画像引用元:筆者作成

 

 ガス代はスマートコントラクトの使用によって発生するため、Dapps開発者とは厳密に言うと当該スマートコントラクトの作成者という意味になります。

 

②トークンの新規発行による報酬

2つ目の報酬体系は、トークンの新規発行による報酬分配の仕組みです。

 

Archwayのネイティブトークンである $ARCHは、その総供給量が毎年7~20%で増加します。

なお2023年8月時点における増加量は、10%に固定されています。

 

この10%の新規発行分の75%(つまり7.5%)をバリデータに支払い、25%(つまり2.5%)をDapps開発者に支払うような設計となっています。

このDapps開発者への分配分をDIT(Dev Inflation Tokenの略)と呼び、各Dappsがブロック内で発生させたガス代の全体から見た割合に基づいて行われます。

画像引用元:Archway公式サイト - Economic Paper

 

③スマートコントラクトの利用手数料の設定

3つ目の報酬体系は、スマートコントラクトプレミアムと呼ばれています。

Archwayにおいてスマートコントラクトの開発者は、ユーザーに対してスマートコントラクトを使用する際の手数料をガス代とは別に設定可能となっています。

 

このような仕様により、一般ユーザーはベースのガス代とスマコン開発者によって設定された手数料の2つの料金が請求される形になります。

 

この仕様はユーザーに対してのみではなく、他のスマコンに対しても適用されます。

つまり、第三者が運営するDappsなどによって手数料の設定されたスマートコントラクトが使用されれば、そのDappsからも手数料収入を徴収できるのです。

 

加えてこういった仕組みにより、完全なDappsを作り上げなくとも、単一のスマコン開発のみで開発者の収益化が可能となります。

 

Dapps開発者への報酬設計の要約

以上の内容を表にまとめると以下のようになります。

なお『ガス代分配による報酬』のパーセンテージについては、ガバナンスによって変更可能であることにご留意ください。

 

報酬設計 開発者への報酬 バリデータへの報酬
※設定手数料に応じてARCH委任者へ分配
バーン
トランザクション報酬
(ガス代分配による報酬)
50% 50%
ブロック生成による報酬
(トークンの新規発行による報酬)
25% 75%
スマートコントラクトの利用手数料の設定 100%

 

上記の表を見ると、かなりDapps開発者への報酬に比重が置かれていることが理解できると思います。

比較としてCosmos Hubの報酬設計を同じフォーマットでまとめてみると、以下の通りになります。

 

報酬設計 開発者への報酬 バリデータへの報酬
※設定手数料に応じてATOM委任者へ分配
バーン
トランザクション報酬
(ガス代分配による報酬)
100%
ブロック生成による報酬
(トークンの新規発行による報酬)
100%

情報元:Cosmos Hub / Validators / Validator FAQ / Incentives

 

ARCHトークン

Archwayでは、ネイティブトークンとしてARCHトークン($ARCH) が使用されます。

以下より、$ARCHの使用用途やトークンの配分の詳細を見ていきます。

 

トークンの用途

$ARCHの用途としては、主に以下の3つが存在しています。

  • トランザクション手数料(ガス代):Archway上でトランザクションを発行する際の手数料として使用する
  • ステーキング:$ARCH をステーキングすることでネットワークの検証に協力でき、その報酬として$ARCH を獲得できる
  • ガバナンス:$ARCHをステーキングしているユーザーは、Archwayのガバナンス投票に参加できる

 

トークンの発行量と配分

$ARCHはArchwayブロックチェーンのローンチ時に以下の配分に従って発行されます。

初期の$ARCHの総供給量は、10億枚になっています。

 

配分対象 配分割合 詳細
エコシステムへの助成金 27.0% Archwayに関連したツール、コミュニティ、アプリケーション、研究、教材などの作成者へ配分される。
プライベートセール1、2 14.5% プライベートなトークン購入者に配分される。
トークンには3年間のロック(1年目は完全ロック、2年目からブロック生成毎に一定量のロック解除)が適用される。
Archway財団 17.5% Archway財団に配分され、Archwayエコシステムのセキュリティ、分散化、成長の促進活動などに使用される。
Phi Labs
(Archwayの運営会社)
10.0% Phi Labsに配分され、ツール作成、ネットワークの保守・開発に使用される。
トークンには3年間のロック(1年目は完全ロック、2年目からブロック生成毎に一定量のロック解除)が適用される。
コミュニティプール 10.0% コミュニティに配分される。
オンチェーンガバナンスにより承認されれば、Dappsへの開発援助や流動性提供、コミュニティ主導の活動に対する協賛金(スポンサー費用)などに使用できる。
コア貢献者 10.0% Archwayの構築に尽力した、あるいは将来的に尽力するコア貢献者に分配される。
トークンには3年間のロック(1年目は完全ロック、2年目からブロック生成毎に一定量のロック解除)が適用される。
エアドロップ 5.0% 複数回に渡りArchwayコミュニティのメンバーに配分される。
コミュニティセール 2.5% 2023年6月に開催されたコミュニティセールで販売された。
トークンは40日間のロックを受け、その後8カ月に渡って一定量のロック解除が適用される。
早期の支援者 3.0% Archwayの立ち上げ時からの支援者に配分される。
トークンには3年間のロック(1年目は完全ロック、2年目からブロック生成毎に一定量のロック解除)が適用される。
テストネットとハッカソン 0.5% メインネットローンチ前のテストネット(Torii testnet)参加者、及びArchway主体で開催されたハッカソンの勝者に配分される。

 

Archwayのエコシステム

ここではArchway上に存在しているエコシステムをいくつか見ていきます。

 

以下の4つのプロジェクトについて、それぞれ解説していきます。

  • Bonusblock(ボーナスブロック)
  • ArchID(アーチID)
  • ArchX Wallet(アーチエックス ウォレット)
  • Liquid Finance(リキッドファイナンス)

 

Bonusblock

Bonusblockは、ユーザーのオンチェーン上の活動に応じて報酬を付与するプロトコルです。

Dappsやブロックチェーン上のユーザー活動に対してインセンティブを与えることによる、ネットワークの拡大と普及の促進を掲げています。

 

Archwayは2023年8月15日から、Bonusblockを用いたキャンペーンを展開しました。

キャンペーンページの案内に沿って操作を行うことで、ユーザーはArchway上のNFTプラットフォームやDeFi(分散型金融)を使用してXP(経験値)やNFT、$ARCH を獲得することが可能です。

 

https://twitter.com/archwayHQ/status/1691142092913782787?s=20

 

ArchID

ArchID(アーチID)は、Archwayのために作られたWeb3ドメインネームシステムです。

 

Archwayのアドレスを指定する際には通常、archway1f395p0gg67mmfd5zcqvpnp9cxnu0hg6r9hfczq といった複雑な文字列を入力する必要があります。

ArchIDを使用することで、このようなアドレスをarchid.archと言ったようなシンプルなドメインネーム形式に変換することが可能となり、送金の際にもこのドメインを指定するだけで良くなります。

 

画像引用元:ArchID 公式サイト

 

ArchX Wallet

ArchX Walletは、ArchwayをはじめとしたCosmosエコシステムのために構築された暗号資産ウォレットのスマホアプリです。

 

資産管理、送金、ステーキング報酬の獲得、DappsへのアクセスをArchX Wallet内の操作で完結できるように設計されており、今後も多数の機能追加が予定されています。

2023年8月時点では、App StoreとGoogle Playの両方でダウンロード可能となっています。

 

画像引用元:ArchX Wallet 公式Twitter

 

Liquid Finance

Liquid Financeは、ArchwayとCosmos全体で利用できるリキッドステーキングトークンを提供するサービスです。

 

ユーザーはLiquid Financeを通してARCHトークンをステーキングすることでsARCHを入手でき、それを別の収益機会の獲得に活用できます。

通常のステーキングではARCHトークンに対して資金拘束が課されますが、Liquid Financeを通すことで資金拘束を疑似的に回避することが可能となります。

 

画像引用元:Liquid Finance公式サイト

 

Archwayの運営団体『Phi Labs』

Archwayを運営・開発しているのはイギリスのロンドンに拠点を置いているPhi Labs(ファイ・ラボ)という会社です。

Phi LabsはCosmos関連の開発企業であるIgnite(旧Tendermint)から派生して作られた団体になっています。

 

Phi Labsは2022年3月24日に、韓国のブロックチェーン特化VC『Hashed』や同じくクリプト系VC『CoinFund』の主導で、2100万ドル(約30億円)の資金調達を発表しています。

調達資金はチームの拡大やArchwayの開発、開発者が利用するツール類の充実に充当するとのことです。

https://twitter.com/phi_labs/status/1506982130483671049?s=20

 

まとめ

本記事ではArchwayというブロックチェーンについて解説いたしました。

Dapps開発者に対する報酬分配の制度を充実させることで、エコシステム全体の成長を促進させるような設計になっていることが理解できたかと思います。

 

Archwayに関心が持てたという方には、当記事の執筆時点(2023年8月時点)にてBonusblockが開催しているキャンペーンに参加することをおススメします。

Archway上のアプリケーションを触ることで、$ARCHトークンを獲得することができます。

コチラのページからキャンペーンサイトにアクセス可能ですので、ご関心があればぜひ取り組んでみてください。

 

参考URL

https://archway.io/

https://archway.io/technology

https://www.crunchbase.com/organization/phi-labs

https://coinpost.jp/?p=333723

https://philabs.xyz/

https://archid.app/

https://medium.com/@archid.protocol/archid-a-name-service-for-archway-network-c221193fa989

https://archway.io/assets/archway-token-allocation.pdf

https://archway.io/assets/archway-economics.pdf

https://blog.archway.io/archway-introduces-bonusblock-incentivized-mainnet-dapp-missions-894f8d03e679

https://docs.archway.io/overview/about

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