みなさんこんにちは。鮎瀬さぶれと申します。
本記事では、Avalancheの特徴、およびその背後にある技術、AVAXトークンについて解説していきます。
初心者の方でも分かりやすく解説いたしましたので、ぜひ最後までご覧いただけますと幸いです。
Avalancheとは?
Avalancheは、米コーネル大学教授のEmin Gün Sirer氏がCEOを務めるブロックチェーン企業「Ava Labs」によって、2020年9月にメインネットがローンチされました。本プロジェクトには、Andreessen Horowitz(a16z)やPolychainなど数々の著名VCが投資を行っており、ローンチ前より業界の注目を集めていたプロジェクトです。
ガス代高騰やトランザクションの遅延が問題視されているイーサリアムの対抗馬となると言われる、「イーサリアム・キラー」の一つでもあります。
画像:Avalanche公式HP画像(Avalanche公式HPより)
Avalanche 基本情報
Avalanche 公式サイト | https://www.avax.network/ |
Ava Labs 公式サイト | https://www.avalabs.org/ |
ホワイトペーパー | https://www.avalabs.org/whitepapers |
Avalancheの特徴
Avalancheの特徴は大きく分けて以下の三つです。
- 独自のコンセンサスプロトコルによるスケーラビリティ問題の解決
- 3種類のブロックチェーンを持つ構造
- 独自のブロックチェーンおよびネットワーク作成が可能
以下より順番に解説していきます。
1.独自のコンセンサスプロトコルによるスケーラビリティ問題の解決
ブロックチェーンにおけるスケーラビリティ問題
ネットワークが正常に処理できる範囲以上に需要が増加してしまうことを、スケーラビリティ問題と呼びます。
BTCやETHなどのブロックチェーンではスケーラビリティと分散性の両立が課題とされてきました。今後ブロックチェーンの実用化が進むに従って、取引量が増加し、スケーラビリティ問題はますます顕著になっていくことが予想されます。
スケーラビリティ問題の解決策の一つに、コンセンサスプロトコルの変更があげられます。
ブロックチェーンのような分散型システムにおいて、意思決定をどのように決定するのかを決める仕組みです。
独自のコンセンサスプロトコル
Avalancheには以下の2つのコンセンサスプロトコルが存在します。
- Avalanche・コンセンサスプロトコル:並列処理によって高い処理性能を実現している(DAG(Directed Acyclic Graph)構造により複数のバリデータ群でトランザクションを並行処理することで、従来のブロックチェーンよりも高速にトランザクションを処理できる)
- Snowmanプロトコル:Avalanche・コンセンサスプロトコルをベースに、スマートコントラクトに最適化されている(Avalanche・コンセンサスプロトコルとは異なり、Snowmanはブロックを作成する)
これらの独自性の高いプロトコルによってAvalancheの高度な分散性およびスケーラビリティが実現できています。
以下の図は、「Avalanche・コンセンサスプロトコル」と従来のプロトコルを比較したものです。「Avalanche・コンセンサス」は「ナカモト・コンセンサス」と「クラシカル・コンセンサス」の長所をあわせ持ったコンセンサスプロトコルと言われています。
「ナカモト・コンセンサス」と同等以上のスケーラビリティ、堅牢性、高い分散性を持ち、「クラシカル・コンセンサス」と同等以上に遅延(レイテンシ)が少なく、一定時間あたり処理できる取引数(スループット)が多く、低エネルギー消費を実現しています。
画像:コンセンサスプロトコル(Avalanche開発者向け文書より)
また、Avalancheは「Avalanche・コンセンサスプロトコル」を「3種類のブロックチェーンを持つ構造(後述)」と組み合わせることで、非常に高い処理能力を実現しています。
Avalancheは、最大で4,500TPS(Transaction per Second/1秒間に処理できるトランザクション数を表す単位)の処理能力があると言われています。これは、ビットコインの7TPSやイーサリアムの14TPSに比べ遥かに大きい値です。
画像:AvalancheとBTC、ETH、Polkadotのトランザクション速度の違い(Avalanche公式HPより)
Avalancheは、Avalanche・コンセンサスと呼ばれる独自のアルゴリズムを採用することで、高度な分散性・スケーラビリティ・高い処理能力を可能にしています
2.3種類のブロックチェーンを持つ構造
Avalancheでは、用途・目的ごとに以下の3種類のブロックチェーンが存在しています。これらはすべて「プライマリネットワーク」と呼ばれるバリデーターによって検証され、保護されています。
- X-Chain(Exchange Chain)
- C-Chain(Contract Chain)
- P-Chain(Platform Chain)
順番に説明していきます。
画像: Avalancheの全体像(Avalanche開発者向け文書より)
X-Chain(Exchange Chain)
AVAXトークンやその他のデジタル資産の作成と取引に使用するチェーンです。
資産作成の際に「特定の日までトレードできない」や「特定の居住地に住む人にしか送付できない」などのルールを設けることは可能ですが、スマートコントラクトには対応していません。DAG(Directed Acyclic Graph)構造を取るため処理速度が速いチェーンです。
C-Chain(Contract Chain)
dApp構築に使用するチェーンです。
EVM(イーサリアム仮想マシン)実装のチェーンで、スマートコントラクトの実行が可能です。Metamask はC-Chainにしか対応していませんので、送金の際にはC-Chainを利用する必要があります。
P-Chain(Platform Chain)
Avalancheのメタデータ(特定のトランザクションの機能に関する付帯情報など、他のデータに関する情報を含むデータ)を記録するチェーンです。
バリデータやサブネットの管理は、このチェーンで行われます。一般的なユーザーは、ステーキングを行う際に利用することが多いです。
AVAXのステーキングの手順の詳細に関しては以下の記事をご参照ください。
Avalancheでは、3つのブロックチェーンが異なる役割を担うことで、1つのチェーンですべてのプロセスを実行するのに比べ、より高いスピードとスケーラビリティを実現できます。
3.独自のブロックチェーンおよびネットワーク作成が可能
Avalancheでは、誰もが独自のルールを設定することができるバリデーターネットワークを作成し、そのネットワーク内でブロックチェーンを作成できます。
プルーフオブステーク(PoS)で、トランザクションを承認する役割を担うノードのことをバリデータと呼びます。バリデータは預け入れた仮想通貨の量に応じてトランザクションの承認権限が割り当てられ、新規発行される仮想通貨を報酬として受け取ることができます。
このバリデーターネットワークを「サブネット(Subnet)」と呼びます。前述の「X, C, Pチェーン」や「プライマリネットワーク」もサブネットの一つです。
サブネットでできること
- サブネットでは、独自の仮想通貨を発行することが可能
- サブネット内のブロックチェーンは、参加に一定の条件を設定したり、プライベート型またはパブリック型などをカスタマイズしたりできる
- サブネットを作成するにはAVAXによる支払いが必要となり、サブネットの作成に使用されたAVAXはBurn(バーン、焼却)される
- サブネットに参加するためには、Avalancheのプライマリネットワークに参加する必要がある(サブネットの数が増加するにつれてメインネットワークに参加するバリデータの数も増加し、結果的にネットワーク全体の分散化が進むことでセキュリティ性能を高められる)
ユースケース
Avalancheはイーサリアムとの互換性があるため、イーサリアム上に開発されている全てのアプリケーションに対応しています。
これらの特性を生かして、DeFi(分散型金融)や、NFT(Non-Fungible Token)、公共機関・企業・政府における活用が期待されています。
- DeFi:Pangolin, Trader Joe, BENQI, Abaracatabra
- NFT:Topps, Kalao, Yeah Probably Nothing
- 公共機関・企業・政府:メキシコ、キンタナ・ロー州議会(立法に関する文書のデジタル証明にAvalancheを活用)
Avalancheでは、誰もが独自のルールを設定することができるバリデータネットワーク、「サブネット」を作成可能です。イーサリアムとの互換性があるため、DeFiやNFT、公的機関などで活用されています
AVAXトークン
AvalancheのネイティブトークンはAVAXです。供給量の上限は7億2,000万枚で、ネットワーク上で支払われた手数料はすべてバーンされる仕組みです。
AVAXには、主に以下の二つの用途があります。
- ステーキング
- 手数料支払い
順番に説明していきます。
ステーキング
バリデーターまたはデリゲーターとして、AVAXをステーキングすることが可能です。ステーキングの詳しい説明は以下の記事をご参照ください。
手数料の支払い
トランザクション手数料とサブネット使用料はAVAXで支払われます。
AvalancheのネイティブトークンはAVAXで、主にステーキングと手数料の支払いに用いられます。
まとめ
Avalancheは以下の特徴を持ちます。
- スケーラビリティ問題の解決
- 3種類のブロックチェーンを持つ構造
- 独自のブロックチェーンおよびネットワーク作成が可能
Avalancheはこれらの特性を生かして、分散型金融(DeFi)や、NFT(Non-Fungible Token)、公共機関・企業・政府における活用が期待されています。
このように、AvalancheはEVMとの互換性や低い手数料を持つことから非常に期待されているブロックチェーンです。但し、DeFiプラットフォームのスケーラビリティとスピードに関しては、既にETHの代替となるプラットフォームも存在しており、競合が多いのも事実です。