1.Defi(分散型金融)とは?
DefiとはDecentralized Financeの略で、日本語では分散型金融と訳されます。定義に関してはまだこれといって定まっているものがあるわけではないのですが、シンプルにいうと”ブロックチェーンの力をあらゆる金融分野(証券、保険、デリバティブ、レンディングなど)に応用させ、分散型で中央管理者を必要とせず、透明性の高い金融プラットフォーム”のようなイメージです。
ブロックチェーンの最初のアプリケーションであるビットコインは、”通貨”を分散型で管理する事に成功しましたが、Defi(分散型金融)はブロックチェーンを使った分散化のアプローチを”通貨”でけではなく、証券、保険、デリバティブなどのあらゆる金融分野に適応する試みなようなものと捉えられます。
現在は主にEthereumを中心としたDefi(分散型金融)のエコシステムが出来つつあり、今回はそちらについてをメインに紹介していきたいと思います。
こちらはDefi全体のプロジェクトがカテゴリー毎にマッピングされている図になります。
こちらのまとめによると、Defiには以下のようなカテゴリーが存在します。
- Decentralized Exchange Protocols
- Stablecoins
- Lending Protocols
- Derivative Protocols / Prediction Markets
- Bundling Protocols
- Fund Protocols
- Tokenization Protocols
- KYC/AML/Identity(DID)
- Applications/Tools
- Analytics
- Misc
また、こちらのEthereumエコシステム内のプロジェクトの統計分析から、数あるDefiのカテゴリーの中でも何が重要なのか、何が盛り上がっているカテゴリーなのかを見ていきたいと思います。
Insights to ethereum ecosystemより
上のグラフはEthereumエコシステム上の数あるプロジェクトをカテゴリー毎に分類した図になります。濃い青線の棒グラフがプロジェクトの数の軸、細い灰色、もしくは薄い青色のグラフが時価総額の軸になります。
この中で、先ほど上げたDefiに分類されるカテゴリーの中でも、プロジェクト数が多いカテゴリーがDefiの中でも盛り上がっているDefiの分野である事がわかります。
実際に見てみると、以下のようなカテゴリーではプロジェクト数が多く、盛り上がっている傾向にあります。
- Exchange (Infrastructure) :分散型取引所
- Investments :分散型投資
- Security & Identity :分散型身分証・ID
- Banking :分散型銀行
- Stable Coin :ステーブルコイン
今回はDefiのカテゴリーの中でも特にプロジェクト数が多い傾向にあったこの5個のカテゴリーに分類されるプロジェクト、サービスに焦点を当て、実際にプロダクトをいくつか利用して、既存の金融サービスと何が違うのか、これからどう変わっていくのかをより深堀りしていきたいと思います。
今の金融サービスとは何が違うの?
実際にDefiを体験してみる前に、具体的にDefi(分散型金融)と従来の金融システムでは何が違うのかを簡単に把握しておきましょう。
すごくざっくりですが、図であらわすとこのようなイメージになります。
多くの金融サービスは、基本的に金銭的価値のやりとりを行う(受け取る側と、渡す側の)2者間以上を含んでいます。
たとえば株を購入する際は証券会社を経由して株の売り手と買い手、銀行では銀行口座に預金する人とその預金で出資をうける人、といった具合に受け取る側と渡す側の2者間が必ず存在します。
従来の金融では、証券会社や銀行は、主にこの受け取る側と渡す側の2者間を繋ぐ”マッチング機能”を提供する事により、取引を円滑に進める事を手助けしていました。主にマッチングの中間に直接入る事によって2者間での取引の信頼を担保し、「価値の移転」の手助けを行う事で、その手数料を貰って収益を上げていました。
一方で、分散型金融では、この取引を金融機関が直接介入して信用を担保するのではなく、あらかじめプログラムされたスマートコントラクトで契約を実行するようになります。
スマートコントラクトとは、ブロックチェーンの改ざんができない点、所有権の移転といった特徴を活かして、AさんがBさんを実際に信頼しなくてもその契約をブロックチェーンが代わりに実行できるようになります。そしてそれはブロックチェーン上で行われるため、不正ができません。
証券会社や銀行などの金融機関でも、多くの業務はいまだに人間がマニュアルで行なっている部分が存在します。一昔前の証券会社社員のミスによるJ:COM株の誤発注や、定期的に起こる銀行振込の送金ミスなども、全て人間が行なっているため、こういったミスが起きる一方、ブロックチェーンを用いれば、あらゆる金融取引において、不正やミスなどが起きなくなります。
言い換えると、ブロックチェーン上で行う取引であるという事自体が、取引の「信頼の担保」として機能しているわけです。多くのプロジェクトがこのブロックチェーンを用いて「信頼の担保」を実現するDefiのプロトコルを開発しています。
では具体的にユーザー視点から見た場合、どういった違いがあるのか。実際に体験してみます。
Exchange (分散型取引所プロトコル)
まずは、Defiのカテゴリーの中でもプロジェクト数が一番多かったExchange (Infrustructure)です。これはいわゆるDEX(Decentialized Exchange)のプロトコルになります。
具体的なサービスとしては、以下のようなサービスがあげられます。
- 0x (https://0x.org/)
- Kyber Network (https://kyber.network/)
- Bancor (https://www.bancor.network/discover)
- Airswap (https://www.airswap.io/)
- hydro (https://hydroprotocol.io/)
- Totle(https://app.totle.com/)
- Uniswap(https://uniswap.io/)
それでは、実際に今回はこの中のKyber NetworkとTotleを利用して、分散型取引所サービスを体験してみたいと思います。
Kyber Networkでは、ETHを利用して、様々なERCトークンなどとの交換をブラウザを経由してウォレット内で行う事ができます。BitflyerやCoinchetkのような取引所にETHを送金し、そして取引所内のシステムで売り手や買い手のマッチングを行わなくても、スマートコントラクトによって自動化された交換が可能です。
ウォレット残高とKyber Network接続するには、Web3.0専用のブラウザが必要です。ここでは個人的な好みですがBinanceと公式提携しているTrust Walletを使ってKyber networkを利用してみたいと思います。
早速Trust walletのモバイルアプリからKyber Networkへとアクセスしてみます。すると、下の画像のように早速「Instant and Secure Token to Token Swap」という事で、Swap →ボタンを押してみます。
そうすると、次は交換するETHの量についての入力と、交換する通貨の選択を行う画面へと推移します。
それではここで実際に、交換するETHの量と交換するERCトークンを選択してみましょう。僕のこのTrust walletには現在約0.21ETHが入っているので、この分をすべてENGトークンに変えてみます。(ENGを選んだのは個人的な好みです。深い理由は特にありません。笑)
0.212ETHを約73ENGトークンへと交換してみます。そうすると、確認画面に飛びますので、ここでConfirmボタンを押して取引を確定します。
その後にTransaction Historyを見てみると、(保留中と表記されていますが)、ブロックチェーン上にトランザクションが走り始めましたね。
こんな感じでKyberを使えば、従来の取引所のようにマッチングの板などは使わなくても、ウォレット内でシームレスに仮想通貨同士の交換ができます。Bitflyerなどに一々入金してから板に注文内容を入力して、取引所のマッチングシステムが取引を完了してくれるのを待って、注文が完了したら自分のウォレットに出金するというような面倒なプロセスもスキップできますね。ただ、手数料が最大3%とBitflyerやBinanceなどの取引所に比べると高いような気もしますが。。
続いてはTotleというサービスになります。こちらも先ほどのKyberと同様のウォレット内で取引所を通さずにスマートコントラクトでERC20ベースの仮想通貨等の交換を行うサービスになります。先ほどのKyberと違うのは、このサービスはあらゆるDEX(Kyber、Rader、Airswap、Bancorなど)を調べて比較して、一番いいレートで交換してくれるサービスだということです。
まず、Kyber Networkの時と同様にTrust WalletのモバイルアプリからTotleのサイトにアクセスします。Connect to TRUSTというボタンがあるので、早速クリックしてサイトにアクセスします。そうすると、現在のウォレット内の残高が表示される画面が出てきます。
次に、Tradeというタブをクリックします。現在はETH以外にウォレット内に通貨が入っていない状態なので、トレードしたい通貨を追加する必要があります。「+ADD TOKEN」とあるボタンをクリックします。ERCトークンの候補が出てくるので、自分が交換したいトークンを選択して追加します。今回はBNBトークンを追加してみます。
次に、ウォレット内のバランスを調整するようなイメージで、自分が配分したいバランスをスクロールバーをスライドさせながら分配のバランスを決めます。ここでは分かりやすいように、ETHとBNBをちょうど同じくらいになるような配分にしてみましょう。
確認画面へと進み、確定させます。トランザクションが承認されたら、ウォレット内の残高を確認します。ETHとBNBがウォレット内にあるのが確認できましたね。
実際にETHはGAS代などに消費してしまったのもあるので完全に同じような割合ではないですが、このようにウォレット内のポートフォリオを調整するようなインターフェイスで交換する事もできます。
Kyber NetworkやTotleなど、分散型取引所を利用する場合は、それぞれの目的や用途によってそれに適したサービスを使い分けるといった形が良いかもしれません。
Investment (分散型投資)
続いては、分散型投資のサービスになります。分散型「投資」というと、かなりふわっとした言葉になってしまいますが、このカテゴリーは主に既存のアセットをトークン化して売買できるようにするSTOなど、仮想通貨やスマートコントラクトを使って、既存の証券会社などを経由しない資金調達、そして投資の形というのをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
代表的なプロジェクトとしては、
- Polymath (https://polymath.network/)
- Harbor (https://harbor.com/)
- tZERO(https://www.tzero.com/)
などが存在します。
今回はtZEROについてご紹介したいと思います。
tZEROは、セキュリティトークン(トレーディング)プラットフォームの開発を行っています。
tZEROのセキュリティトークントレードプラットフォームは、公開企業及び未公開企業が、STO(セキュリティトークンオファリング)を通じて、資金調達の機会を提供します。
また、投資家にも、セキュリティトークンのトレードが可能な売買プラットフォームの提供も行おうとしています。
tZEROのプラットフォームは、分散型台帳技術と既存の金融市場プロセスを統合し、その流動性を増やし、トレードに要する時間とコストを削減することを計画しています。
現在の証券ルールでは取引の制限時間や、国境を越えた取引の制限などが確かに存在するため、ブロックチェーンを使ったSTOでは証券会社のサービスに依存せずとも運営が可能なため、流動性、コストの面でメリットが見込めるのでしょう。
よくSTO (Security Token Offering)の話題では、既存の証券をトークン化する事やそのメリットがフィーチャーされがちですが、STOはそれ以外にも資産性のある全てのものをトークン化するという意味も含まれています。証券だけでなく、債権、不動産などの資産性のあるものをトークン化して24時間365日ボーダレスでリアルタイムに価値が流通する事が最も重要で革新的な部分だと思っています。
実際に、アメリカで、イーサリアムブロックチェーン上で不動産のトークン化を目指すようなプロジェクトもあり、約20億円の資金調達を行いました。
まずはとっかかりとして、しっかりと裏づけされた資産性を持つ証券のトークン化はブロックチェーンと非常に相性が良く、徐々にこういったサービスが今後始まってくるかもしれません。
Security・Identity (分散型身分証・ID)
続いては、分散型身分証、IDのカテゴリーになります。ユーザーそれぞれのIDをよりブロックチェーンで分散的に管理する事で、改ざんができず、透明性を保って個人のデータを管理するプロジェクトになります。
イメージしやすいところで言うと、今のFacebook IDなんかに近いかもしれませんね。Facebook傘下以外のサービスでも、例えば食べログみたいなサービスでもFacebook IDでログインできちゃいます。IDは当然各サービスの利用履歴などが記録されていて、分散型IDを経由して、各サービスの利用データなどから、信用力のスコアリングなどが可能になります。
従来のFacebook IDとブロックチェーンを用いた分散型IDの一番の違いは、Facebook IDの場合はFacebook社が全て管理しているのに対して、分散型IDはブロックチェーンで管理しており、言い換えると誰も管理者が存在しません。そのため、昨今Facebook社で起きているようなデータの漏洩問題やなどは発生しません。
代表的なプロジェクトとしては、
- uPort (https://polymath.network/)
- Bloom (https://bloom.co/)
などが存在します。
今回は、クレジットカードの利用履歴を元にスコアリングを行うBloomというサービスで、実際に自分のIDを作ってみましょう。
まずは、Bloomにアクセスします。例のようにMetamaskに接続する必要があるので、Metamaskに接続しましょう。
そして、Metamaskに0.1以上のBLT(Bloomのトークン)を用意し、実際にメールアドレスなどを登録して会員登録を行います。
確認メールなどを済ませると、実際にBloomでのIDにアクセスができるようになります。
投票などの機能や、ニュースの受け取りなどがあるようです。分散型IDと聞くとすごく難しそうな印象を受けますが、意外と簡単に作れちゃいますね。もし興味のある方は試してみてください。
Bank (分散型銀行)
次はBank(分散型銀行)のカテゴリーになります。
分散型「銀行」と言うと、こちらもかなり広い定義になってしまいますが、ここでは主にレンディングやローンなどの銀行業務をスマートコントラクトで行う事を目指しているプロトコル群になります。
代表的なプロジェクトとしては、
- Compound (https://compound.finance/)
- ETHlend (https://ethlend.io/#/main)
- Marble (https://marble.org/)
- Dharama (https://dharma.io/)
などがあります。
今回は、Compoundを実際に使ってETHの貸出を行なって、利息を得る方法をご紹介してみたいと思います。
Compoundプロトコルについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事でとてもわかりやすく説明されています。
まずは、Compoundのサイトにアクセスします。ランディングページになっているので、早速”Begin using Compound”のボタンを押してみましょう。次に、実際に貸出を行なってみます。Compoundで現在利用できる通貨は以下の5種類です。
- BAT
- DAI
- REP
- WETH
- ZRX
* WETHはWrapped ETHの略で、ETHと1:1で価格がペグされているERC20トークンの仮想通貨です。
それぞれの貸出し金利もRateの部分に記載されています。金利の推移はこちらからも確認できます。DAIの金利が一番高い傾向にあるようですが、今回はCompound上でWETHの貸出しを行ってみたいと思います。それぞれの通貨の貸出し金利は真ん中に書かれている数字になります。(*初回はEnable WETHというボタンをクリックしてWETHを有効にしてください。)そして次に、ETHをWETHに変換し、貸出しを行なってみます。今回は0.013ETHをWETHに変換し、Compoundで貸出しを行なってみました。0.45%の利回り(年)です。こんな調子でもう少し長期間運用してみようかと思います。
また、こちらの例ではWETHの貸出しを行いましたが、上記で挙げた各通貨の借入れも可能です。借入れの場合は少し注意が必要なのですが、まず担保資産を預ける必要があります。Compoundでの預け入れ資産を担保にでき、最大でその総額の3分の2ほど借入れができます。借入れの際は手数料として0.025%取られます。
また、注意点として、担保となる預け入れ資産は借入資産の150%以上をキープしなくてはならず、150%を切ると精算(5%のペナルティー)されてしまいますので、借入れ額に関しては注意が必要です。
Stable Coin (分散型ステーブルコイン)
続いては、ステーブルコインのカテゴリーになります。
ステーブルコインとは、価格ボラティリティが激しいビットコインやイーサのような通貨とは違い、価格が一定に推移するように設計された仮想通貨です。
実際にステーブルコインがどのようなメカニズムで価格が形成され、また維持されるのかなどのより詳細な情報については、こちらでも詳しく説明されています。
主にDefi分野で分散型の仕組みを用いてステーブルコインを開発しようとしている代表的なプロジェクトには
・Maker DAO(https://makerdao.com/en/)
・Fragments(https://www.fragments.org/)
・Carbon(https://www.carbon.money/)
などが存在します。
今回は、ETH全体の供給量の内、約1%が実際にロックされて利用されている、Maker DAO(DAI)を実際に利用してみたいと思います。
まず、DAIのダッシュボードへアクセスします。OPEN CDPというボタンがあるので、早速クリックしてCDPを作成します。ETHの欄に担保とするETHの量を入力します。DAIの部分でその担保とするETHを元に、発行するDAIの量を入力します。(*1DAI = 1$となっていて、ETHの担保($建て)に対して、最大で150%相当のDAIの借入が可能ですが、清算されてしまう可能性が非常に高いため、右下のCollatelazation Ratioに余裕を持たせてDAIを発行しましょう。このCollatelazation Ratioが150%を切ると清算されてしまいます。)
実際にCDPの作成内容が決まれば、決定ボタンを押して次に進みます。規約に同意すればチェックマークを入れて、確定します。GASを送ってトランザクションが承認されると、写真のように確定したCDPが表示されます。
実際に0.03ETHを担保に1DAI借りてみました。Liquidation Priceが約50$なので、1ETHの価格が50$を下回らない限り清算はされません。現在(*2019/2/2)のレートが1ETH = 105$である事を考えると、かなりゆとりを持たせています。
では、次にDAIを有効にしましょう。最初の画面にあった、各通貨の有効化の部分で、DAIを有効化します。GASを払ってDAIが使えるようになったら、ウォレットの中身を確認してみましょう。ちゃんとステーブルコインDAIのトークンがウォレット内に確認できました。
ここまで、ETHを担保にステーブルコインDAIの発行を行いました。実際に、他にもsETH(ショートポジションのETHをトークン化したもの)や、lETH(ロングポジションのETHをトークン化したもの)もexpoというサービスなどで利用できます。
今回は、実際に借り入れたDAIを利用して、lETHでETHのロングポジションを取ってみましょう。
まず、expoにアクセスします。ランディングページになっているので、早速trade with expoというボタンをクリックします。そうすると、sETHとlETHのポジションのトークンのリストが出てくるので、自分が注文したい商品を選択します。今回はLETH (1.89X)を選択しました。
次に、先ほどETHを担保に借入れを行なったDAIを使って、このlETHを購入します。購入画面でDAIを選択し、確定させます。トランザクションが承認された後ウォレット残高を見ると、Leveraged ETHというトークンが追加され、DAIの残高が減っている事が分かります。
この一連の組み合わせで、ETHを担保にステーブルコインDAIを発行し、そのDAIを使ってETHのロングの(リバレッジ)ポジションを持つ事ができました。これも全て第三者機関の審査などはありません、ETHを消費する必要もありません。借入れ、清算なども全て予め定められたルールにしたがって、全てスマートコントラクトで行われる事は非常に注目すべき点です。
また、MakerScanというサービスで、CDPポジションの現状を見たり、他のアドレスからDAIを追加できたりする事もできます。
他にも、instadappsでは、Looping CDPというようなサービスも開発しています。
Launching "Looping CDP" on @InstaDApp enabling you to initiate 3x recursive leverage long on ETH locked in your @MakerDAO's CDP. https://t.co/UYbGoIuFIL pic.twitter.com/NM5C04sZ7B
— Sowmay Jain (@sowmay_jain) January 29, 2019
勘の良い読者さんならすでにお分かりかと思いますが、先ほどのCompoundでもDAIを取り扱っていましたね。ETHを担保にして発行したDAIでETHを買うもよし、レンディングに出して利息を得るもよし、様々な事ができますね。銀行ほどまではいかなくても、個人がETHを持つだけで、「プチ信用創造」みたいな事ができちゃいます。(*維持率には十分気をつけましょう。)
その他のDefi
また、上記では挙げていませんが他にも予測市場(Prediction Market)もDefi(分散型金融)にカテゴリーされる非常に面白い分野です。スマートコントラクトを用いて胴元を必要としない分散型未来予測プラットフォームのようなイメージです。群衆の知恵(Wisdom of the Crowd)という少数の専門家の意見よりも、多数の群衆の意見の方が正しい場合が多いという理論に基づいたプラットフォームになっています。
未来の出来事に対して予め予測を行い、いくらかの掛け金を用意します。それが正解であればビットコインやイーサなどの仮想通貨で報酬がもらえ、間違っていれば掛け金は没収されます。
例としては、明日の試合で勝つのはどっちのチーム?といったブックメーカーでの利用や、60歳までに病気にかかるかどうか、などといった保険の分野での適用も考えられます。
この分散型予測市場での代表的なプロジェクトは
- Augur(https://www.augur.net/)
- Gnosis(https://gnosis.pm/)
が有名です。
今回は、実際にAugurで分散型未来予測に参加してみましょう。まず、Augurのサイトにアクセスします。Web3.0モバイルブラウザでアクセスしているので、Web Appをクリックして接続します。
現在参加可能な未来予想の出来事のリストが表示されるので、自分が参加したい出来事を選択します。
今回は”ビットコインが2019年5月までに1200ドル以下で取引されるか?” というY/Nタイプの質問に参加してみます。
僕の予想としては、1回だけ1200ドル付近まで落ちる可能性も全然あり得ると思うので、YESでこの未来予測に参加します。
YESで1Share分だけ購入してみました。これで今年の5月末までにビットコイン価格がどうなるのかを見守っていきたいと思います。
例えばAugurではビットコインが下がるという方にBetしつつも、取引所などでビットコインをロングすれば同時にヘッジもできたりしますね。
また、先ほどのステーブルコインと組み合わせて、ETHを担保にしてDAIを発行し、DAIを使ってETHを買い、買ったETHを使ってAugurで予測市場に参加する、といった事もできちゃいます。
このように、組み合わせ次第では未来予測市場も強力なツールとなる事ができます。
Defiを体験してみて感じたこと
ここまでDefi(分散型金融)サービスを一通り使ってきました。仮想通貨の売買や、資産の貸出/借入、ローン発行など現在は第三者機関に頼らなければできないものでも、全てETHさえ保有していれば、スマートコントラクトで完結できてしまいます。
また、ここでは触れていませんが、Augurの予測市場を用いたVeilや、Guesserなどのデリバティブ市場などもこのDefi(分散型金融)の分野に分類されます。
記事の冒頭でも説明した、まさにブロックチェーンによる信用を通貨だけでなく、様々な金融分野へと応用している事がわかります。
従来の金融サービスでは、主に勤め先、勤続年数、年収、家族構成、クレカの支払い履歴などをベースに個人の「信用」を査定し、その「信用力」によって融資額などを第三者機関が判定していました。
しかし、ここで取り上げたDefiでは、どのサービスも筆者の勤め先や年収などの情報を持たずとも、保有するETHによって融資やローンを組む事ができました。言い換えると、ETH自体が「信用」として機能している事になります。(*最近では、WBTCというBTCと1:1の比率で推移するERC20トークンベースのBTCもリリースされたようです。)
一方で、やはりMetamaskを経由したブラウザ接続や、担保や維持率、スマートコントラクトの仕組みなどは誤解を恐れずにいうと、「正直分かりずらいな」という印象を持つ部分も多々ありました。こういったユーザーフレンドリーではない設計では、所詮イノベーター達の「おもちゃ」からは進化できないのが現実です。Defiの今後のマスアダプションのためにも最低でも既存の金融サービスと同等、もしくはそれ以上のUI/UXになってくれば、ETHを基盤とした新しい「信用」の経済圏が出来上がってくるようになるかもしれませんね。