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*この記事では主にPolkadotプロジェクトの背景や概要、インターオペラビリティ(相互運用性)などPolkadotの特徴、トークンであるDotトークンの役割や設計、コンセンサスメカニズムなどについて解説していきます。

Polkadotプロジェクトの概要

公式ホームページ:https://polkadot.network

Whitepaper : https://polkadot.network/PolkaDotPaper.pdf

Lightpaper : https://polkadot.network/Polkadot-lightpaper.pdf

Polkadotは2017年にEthereum上でICOを行い、日本円で約350億円の資金調達を行いました。また、最近でも追加で66億円分の資金調達のためのICOを検討している事が報じられていました

PolkadotはWeb3 Foundationという団体によって進められているプロジェクトです。

Web3 Foundationとは、サーバーを必要としない、分散されたインターネットの世界の実現を目標として掲げており、Web上のデータやアイデンティティなどを、ユーザーが自身で管理できるようなインターネットの姿を理想としています。

このWeb3 Foundationの中心人物は、Ethereumの共同設立者で、以前CTOを務めていた Gavin wood氏です。Web3 FoundationではPresidentを務めています。

Vice Presidentは Aeron Buchanan氏で、彼も以前Ethereumプロジェクトに携わっていた人物です。

開発に関しては、Web3 FoundationはPolkadotの開発についてはParityTechnologiesに委託する形をとっています。

ParityTechnologiesは、Web 3 FoundationのPresidentでもあるGavin Wood氏と、CEOであるJutta Steiner氏を中心に50人以上の開発者が在籍しています。

余談ですが、ParityはPolkadot以外にもEthereumのクライアントであるParity Ethereum、EthereumのウォレットであるParity Fetherや、他にもParity Substrateなど、多岐にわたるブロックチェーン関連プロダクトの開発も行っています。

Parityが提供するEthereumウォレットに関しては、2017年11月頃、脆弱性により、約15万ETH(当時の時価で数百億円にも及ぶ)が「凍結」されている事が確認されました。この凍結されたETHに関して現在もまだ、「凍結」されたままとなっています。(*2019/03/29現在)

https://jp.techcrunch.com/2017/11/08/2017-11-07-a-major-vulnerability-has-frozen-hundreds-of-millions-of-dollars-of-ethereum/

Substrateとは?

また、Parity Substrateとは、ブロックチェーンの開発フレームワークのようなもので、Substrateを用いればPolkadot以外のブロックチェーンでも、誰でも作成する事ができます。(*最近でも、Layer XさんからSubstrateを用いた秘匿化ブロックチェーンのZeroChainが発表されました。)

PolkadotもこのSubstrateのフレームワークを用いてるブロックチェーンの1つで、Substrate元に構築されています。

Substrateは、言わば1種のWebアプリケーションのフレームワークのようなもので、現在のWebアプリケーションを作る際もその都度HTTPSなどのプロトコルを開発しなくて良いように、Substrateを使えば、ブロックチェーンの開発も低レイヤーの部分を0から作る必要がありません。

他の開発フレームワークではなくSubstrateを用いる事で、ブロックチェーン開発において以下のようなベネフィットを受ける事ができます。

  • コンセンサス、フィナリティ、ブロック投票ロジック、ビザンチン将軍問題に対する耐性、などの機能を得る事ができます。要するに、いくつかのブロックチェーンネットワーク内のいくつかのノードが故障していたり、悪意があるノードであった場合でも、正常に稼動し続ける事ができます。
  • Web Assemblyの実行環境があり、Web Assemlyを通してスマートコントラクトを実行する事ができます。Web Assemblyの利用は必ず行わなければならないわけではありませんが、Substrateベースの他のプロジェクトも走らせる事ができるという利点から、今後世界中の開発者コミュニティを惹きつける事ができる、としています。
  • デスクトップ、またはクラウドノードと通信できるノードをブラウザ内で実行する事ができる。(ブラウザでノードを走らせる事ができる。)
  • プラットフォームを跨いだデータベース / ファイルストレージがあり、それらはブラウザで動く。
  • コンセンサスに影響を与えそうなコードのアップデートは、コードをWeb Assemblyにコンパイルし、それをネットワーク上の”メッセージ”としてでデプロイする事で実行する事により、クライエントのアップデートがとてもスムーズに、楽に行えるようになります。
  • プロジェクトがリリースされすぐに、Polkadotネットワークと接続する事ができます。Substrateでビルドされたプロジェクトはプロジェクトごとに別々のクライアントを使用するようにコンパイルできますが、PolkadotはSubstrate APIを実装しているので、Polkadotが提供する共有セキュリティ(Share)と相互運用性(Interoperability)の恩恵を受ける事ができます。

Polkadotのコンセプトと仕組み

Polkadotは、Web 3の実現のため、将来的には様々なブロックチェーンが共存するはずだとしています。様々な共存するブロックチェーンを繋ぎ、異なるブロックチェーン間の相互運用が可能になった分散型のインターネットの実現をコンセプトとしています。

Polkadotの仕組み

Polkadotの仕組みとしては、主に以下の3つの技術を用いています。

  • Relay chain (チェーン間のコンセンサスとトランザクションの配信を調整)
  • Parachains (トランザクションの収集と処理を行うブロックチェーン)
  • Bridges (イーサリアムのような独自チェーンを持つブロックチェーンとのリンク)

- Relay chainとは、Polkadotブロックチェーンのメインの役割を担っており、文字通り異なるブロックチェーン間の”中継”を行います。

- Parachainとは、Relay chain上にある個々のブロックチェーンであり、Polkadotネットワーク内で並列にブロックを作成します。

- Bridgeとは、Polkadotのルールが適応されない、(イーサリアムのような)独自ブロックチェーンを持つブロックチェーンをつなぐためのチェーンです。

これら3つを用いて、Polkadotは現存のブロックチェーンの課題を解決するために開発されています。

その際、現存するブロックチェーンには、大きく以下のような課題があるとしています。

  • Interoperability
  • Scalability
  • Shared Security

それぞれの課題と、Polkadotの技術について解説していきます。

Interoperability (相互運用性)

現在リリースされている様々なブロックチェーンは、単一のブロックチェーンのエコシステム間での完結が基本的には想定されています。

つまり、異なるブロックチェーン間でのDappsや、スマートコントラクト等の相互運用は想定されていません。

たとえばBitcoinブロックチェーン、Ethereumブロックチェーン、リップルブロックチェーンなどは基本的にすべて互換性が存在しません。

(*Bancorなどに代表されるAutomic Swapでは、EoSとEthereum間などの異なるブロックチェーン間でのトークンの交換は既に実現されています。)

将来的にはブロックチェーンが発達していけばいくほど、単一ではなく複数以上の異なる特徴を持ったブロックチェーンが存在していくと予想されますが、その際に異なるブロックチェーン同士での相互運用性は必須になってくるはずです。

実際に現在のWeb2.0の中心と言われるモバイルインターネットの世界でも、(圧倒的にAndroidのシェアが大きいですが)iOSとAndroidという2つの主要なOSが存在しており、相互に互換性はありません。

Web3が目指す分散化されたインターネットの世界では、様々な異なるブロックチェーン間を相互運用可能にし、シームレスにスマートコントラクトでデータやアセットの移動が簡単できる世界を目指しています。

上記で説明した、このRelay Chainにより、Polkadot内の独立した異なるブロックチェーン間の中継が可能になります。

また、Bridgechainを用いて、イーサリアムのような独自ルールを持つブロックチェーンとも連携ができるようになり、異なる様々なブロックチェーン間の相互運用が可能になります。

Scalability(スケーラビリティ)

現存する多くのブロックチェーンでは、各ノードがそれぞれ一つずつトランザクションを検証しなければなりません。

そのため、どうしてもトランザクションスピードに限界がありました。

Polkadotでは、複数のParachainと呼ばれるPolkadotネットワークに存在する並列化されたチェーンが同時にトランザクションを平行して処理する事で、スケーラビリティの問題に対応しています。

(*Polkadotが行ったテストでは、現在TPSは最大で1000を記録したとしています。)

Shared Security(共有されたセキュリティ)

現存する多くのブロックチェーンは、その構造上各々のブロックチェーンのセキュリティ確保(51%攻撃などを防ぐ)のためには、多くのリソースを必要とし、結果的に多くのリソース浪費してしまいます。

たとえばPoWのライトコインネットワークのセキュリティを保つにはより多くのコンピューティングリソースを割かなければならず、他のPoWを用いたZcashなどのネットワークで割かれているコンピューティングリソースなどから結果的に奪わなければなりません。(世界中に存在するコンピューティングリソースは有限であるため。)

このため、比較的小さなチェーンやなどでは51%攻撃を防ぐ事は容易ではなく、最近でも様々なブロックチェーンで51%攻撃が起きています。

多くの小さなチェーンなどは、セキュリティ上十分な量のリソース(コンピューティングリソースや、Stakingのコスト等)を確保するのは難しいためです。

Polkadotでは、Pooled Securityといった形で、SecurityはネットワークにPoolされています。1つのCommon Security(共通のセキュリティ)を各々のブロックチェーンが活用できるようなイメージです。

仕組みとしては、Polkadotネットワーク自身のバリデーターをパラチェーンに貸し出し、それらに「Pooled Security(プールされたセキュリティ)」を提供することによって、ステートマシンを合意メカニズムから切り離すことで可能になります。

各々のプールされたセキュリティは、PolkadotのRelay Chainのコンセンサスに埋め込まれるため独自の合意メカニズムは選択することができなくなります。その結果として、1つのShared Security(共有されたセキュリティ)を実現しています。

これにより、各々のブロックチェーンのセキュリティはPolkadotネットワークのCommon Securityによって保証されるため、新たなブロックチェーンは一から多大なリソースを必要としなくても、セキュリティが担保される形になっています。

Polkadotネットワークのステークホルダー

Polkadotネットワークでは、以下の4つの参加者の役割が存在しています。

  1. Collators(照合者)
  2. Validators(承認者)
  3. Nominators(任命者)
  4. Fishermen(監視者)

全体像としては、こちらの画像がとても参考になります。

Collatorsはブロックを形成し、データをValidatorに引きたわします。

Validatorは取引の承認を行います。

NominatorはValidatorの中から”Good Validator”を選出します。

FishermanはValidatorsを監視し、悪意のある取引などを検知します。

それぞれの役割について、もう少し具体的に説明していきます。

- Validatorは、PoSを採用しているPolkadotネットワーク内でDotトークンをステークする事で、Collatorsから受け取ったデータの検証作業を行います。

- Nominatorは、Polkadotネットワークを強化するために、Dotトークンをステークして”Good Validator”を選出します。

- Collatorは、ParaChainのトランザクション等のデータを集め、Validatorに引き渡します。

- Fishermenは、Polkadotブロックチェーン内でのトランザクションを監視し、悪意のある取引などを検知する役割を担っています。

Dotトークン

Polkadotネットワークでは、Dotトークンというトークンが存在します。

Dotトークンは、Polkadotネットワーク内で主に以下の3つの役割で機能します。

  1. Governance
  2. Operation
  3. Bonding & Payment

3つそれぞれの役割について説明していきます。

Governance

Dotトークンの役割の1つとして、DotトークンホルダーはPolkadotネットワーク内のガバナンス権が与えられます。

公式では以下のように書かれています。

The first function of DOTs will be to entitle holders to complete governance control over the platform. Included in this governance function is determining the fees of the network, the addition or removal of parachains, and exceptional events such as upgrades and fixes to the Polkadot platform.

- What are DOTs? より

具体的には、DotトークンホルダーはPolkadotネットワーク内の手数料の決定や、パラチェーンの追加・削除、プロトコルのアップデートや修正などに関与できます。

Operation

PolkadotはPoS(Proof of Stake)のコンセンサスを採用しています。Dotトークンホルダーは、DotトークンをStakeし、Stakingに参加する事ができます。

公式では以下のように書かれています。

In order for the platform to function and allow for valid transactions to be carried out across parachains, Polkadot will rely on holders of DOTs to play active roles. Participants will put their DOTs at risk (referred to as “staking” or “bonding”) to perform these functions, which acts as a disincentive for malicious participation in the network.

- What are DOTs? より

Dotトークンホルダーは自身のDotトークンをステーキングし、ネットワーク内の取引承認に参加します。ゲーム理論を用いたインセンティブ設計を用いており、ネットワーク内の”Good Actors”にはより多い報酬を、”Bad Actors”にはステークされたDotトークンの没収という設計を採用しており、これにより、悪意のあるネットワーク参加者の攻撃を防ぎます。

Bonding

Dotトークンを結びつける事で新しい新しいParaChainを作成したり、Dotトークンを取り除く事で、古くなったり使われなくなったParachainを取り除く事ができます。

公式では以下のように書かれています。

“The third function of DOTs will be the ability to add new parachains by tying up DOTs (referred to as “bonding”). Outdated or non-useful parachains are removed by removing bonded tokens.”

- What are DOTs? より

ある種のPoSの形式にとても近いと言えるでしょう。

総括

現在の一部の巨大Tech企業によって中央集権的に管理されていたWeb2.0から、分散されたインターネットの世界観を目指すWeb3 FoundationによるPolkadotプロジェクトの概要についての紹介でした。

Interoperability(相互運用性)の概念は非常に面白いものだと思います。

将来的に複数のブロックチェーンが共存する世界というのは、現在これだけ多くのブロックチェーンプロジェクトが立ち上がっているのを見ると、やはりイメージはしやすいかなと思います。

1つのブロックチェーンでスマートコントラクトや、国際送金、高速処理など全てのニーズをカバーするのはかなり難しいのが現状です。

プライベートチェーンやコンソーシアムチェーン、パブリックチェーンなど、異なる目的と要件を持ったそれぞれのブロックチェーンによる共存はやはり不可欠なのではないのでしょうか。

そのようになった場合、それぞれのブロックチェーン上の相互運用を可能にするPolkadotの存在は非常に重要な役割を担ってくるのではないか、と筆者は感じています。

*Web3 Foundationは、「PolkaDAO」という、Polkadotに関する提案に資金を提供するためのコミュニティ主導の分散型自律組織(DAO)に1万ドルのDAIを寄付しています。

この「PolkaDAO」の活動は、2019年4月初旬以降の開始を予定しています。(*2019年3月29日現在)

運営者情報

Stir lab運営元のSTIR (スター)は、ETHERSECURITY PACIFIC HOLDINGS PTE. LTD.(本社:シンガポール、代表取締役:加門昭平)及びその100%子会社である株式会社イーサセキュリティ(本社:東京都渋谷区、代表取締役:加門昭平、紫竹佑騎)が運営するWeb3 Consulting & Development Teamです。

 

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